それは、中学校に入学して間もない4月。その日学校のチャイムが鳴った瞬間、全速力で走って帰ったのを今でも鮮明に覚えています。
小学6年生の終わりに音楽の道に進むと決意した私に、両親がグランドピアノを買ってくれたのです。それまでは、近所に住んでいた祖父母の家に遊びに行ってはピアノを弾くのが小さな楽しみの1つでした。小学校を卒業するまで、英会話や水泳、フィギュアスケート、茶道、そしてバレエなど、たくさんの習い事をさせてもらっていました。習い事の中では1番遅く始めたのがピアノでしたが、幼稚園の頃から、担任の先生のピアノを真似することが好きで、遊ぶようにしてピアノを弾いていた記憶があります。ピアノを弾くと喜ぶ家族の笑顔を見る幸せは、この頃から子どもながらに感じていました。人を笑顔にすることができる音楽の力と、それを仕事にするピアニストという職業に憧れ、ピアノ修行の日々が始まります。

私とピアノ〜黒住先生〜
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ピアノが家にやってきた日

何のために演奏する?
発表会や弾き合い会、コンクール、受験、試験など、、たくさんの本番を経験するようになりました。聴いてくれる人を笑顔にしたい!感動してもらいたい!のはずが、「あぁ~今日もここができひんかった」「緊張で指が動かへんかった」の連続。気が付くと自分は何のためにピアノを弾いているんだろう?と思うようになっていました。
「もう辞めたい」と、ある本番を最後にピアノを辞める覚悟を決めて臨んだステージがあります。最後となると、自分のこれまでの全てを一音一音に込めたい、誰が何と言おうと自分の良いと思う音楽を表現したいと、無意識に強く願って準備していました。本番当日、いつも通りの心臓が口から出そうな程の緊張でしたが、自分の表現したい音楽を思いっきり演奏できた充実感がありました。
ピアノを弾くことは自分を表現すること
この本番をきっかけに、先生の「何をイメージして弾いているの?何を伝えたいの?」という言葉の意味をよく考えるようになりました。
どんな音色?どんな景色?場面?、、と自分のイメージを膨らませて練習を重ねていると、いざ舞台に上がった時に、どれだけ緊張していても頭の中に深く刻まれた自分のイメージは必ず音になります。そしてそれを少しでも表現できた時、聴いてくれた人に何か伝えられた時の喜びは何にも変えられないものだと思っています。
この気持ちを少しでも感じてもらいたいと思って、私も日々レッスンしています。
小さな生徒さんでも、大人の生徒さんでも、ピアノを弾く技術だけを求めるのではなく、一緒になって弾きたいイメージを考えることを心掛けています。そして、本番や日々のレッスンの中で、思いっきり自分を表現できた時の生徒さんの笑顔は、本当に輝いています。
プロフィール
黒住友香(くろずみ ともか)Tomoka Kurozumi
大阪府出身。京都市立京都堀川音楽高等学校を経て、京都市立芸術大学を京都音楽協会賞を受賞し卒業。在学中にソリストとして日本センチュリー交響楽団と共演する。奨学金を得て、アメリカ・北フロリダ大学に留学。帰国後、東京藝術大学大学院音楽研究科ピアノ修士課程を修了。第5回スペイン音楽国際コンクール第1位を受賞。 これまでにピアノを森二三、後藤由美子、福原千織、中川美穂、ゲアリー・スマート、上野真、青柳晋の各氏に師事。現在は近藤嘉宏氏に薫陶を受けている。
